銀座のパーティーで会ったのは天使か悪魔か?(1/2)
「ふーーー」
初めてのお見合いパーティー参加を前に藤田は緊張している様子。必要以上にブレスケアを口に入れ、少し離れた位置からもスーツに振りかけたキツイ香水とブレスケアの匂いがコッチまできた。
「やり過ぎたよ笑」なんて話しながら会場が開くのを待つ。
-10分後-
ガチャっとドアが開き、係の人が案内を始めるが、人が多いので少し待ってから入場。
会場へ入ると50名以上の人数が集まっているものの、男女比は7:3で良いバランスとはいえない。きっとサクラだって混ざってるだろう。
またか……。実はこの手のパーティーで男女比7:3は珍しくない。「大丈夫かコレ?」と焦る藤田。彼はこのパーティーを心待ちにしていたので、男女比を見て危機が出てきたようだ。
僕は「いい人さえいれば比率なんて関係ないよ」とフォローをして開始を待つ。
【婚活パーティー 〜ファーストコンタクト〜】
女性が壁際の席に腰掛け、男性が内側を時計回りに回りながら3分間のトーク。しかし、今回のような男女比の場合、一人の女性と話した後は1、2回休みとなる。トーク終了後、もう一度話したい女性3名の名前を記載。
-パーティー開始-
会場に入った時はチラッとしか見なかったが、やはり12月23日に婚活パーティーへ来るだけあって、特別綺麗な女性がいる訳ではない。むしろ進行している係の美しさが際立っていた。
最初のコンタクトはバタバタしていて、3分の間に自己紹介と趣味や仕事のことなどを大雑把に話し、3分が終了すると席を隣に変えて3分休憩(隣はトーク)してまた次の女性と話す。
時間がないので仕方がないが、3分だけでは良く分からないし、一人一人の記憶が曖昧になり頭も疲れる。
こういうところで自然に接する藤田が羨ましい。少し離れた位置にいたが、彼は目の前に女性と楽しそうに話している。
(やるじゃねえか…)
-約30分経過-
時計周りで半分ほど回った頃、少し異質な女性の前へ。その女性は熊田曜子似で職業欄には【社長秘書】。少し落ち着いたトーンで話す姿は他の女性と一線を画しており、一言で言えば[魔女]
しかしなんだろうか?少し嘘っぽく感じるのだ。わざわざ【社長秘書】って書くか?住まいも麻布って。。。
トーク終了後、席を移動する前にその女性は一枚のメモを渡してきた。
メモには
[カオリ 090-××××-××××]
名前と電話番号が記載されていた。
!?
3分の休憩中にカオリさんを見ると、入れ替わりで前の席に座った男性と楽しそうに話していて、終了後にまたメモを渡していた。恐らく僕と同じように名前と電話番号だろう。
その後全ての女性と話し終える。気になったのはカオリさんの行動。あれはどういう意味なんだろう?
係から『もう一度話してみたい人3名を記載お願いします!』と、事前に貰っていた用紙に女性の番号を書くよう指示を受け、皆がペンを走らせる。藤田を見ると既に決っているようで提出済み。
藤田が急かす。「トイレ行きたいから早く書いてよー」該当者0だったので、係の女性の名前を書いて休憩へ向かう。
THE END
こんなバカな選択をする人もいないが、無理して選んでもうまくいかないので諦めた。
(今日はハズレかな?)
一方で藤田は楽しそう。
「俺さ、、、さっき綺麗な人から番号貰ったんだよね!」
「あっ、19番(カオリさん)の人?あの人他の人にも渡してたよ」
「マジ?・・・まあいいや、俺カオリさんいくよ!」
タフやねん。
藤田タフやねん。
-休憩終了-
フーリータイムスタート
【婚活パーティー 〜フリータイム〜】
フリータイムのルールは至ってシンプルで誰と話してもよい。また、会場へ戻る際、係から[☓☓番、◯◯番、△△番]と記載されたメモ用紙を貰い、これは何番の人から「もう一度話したい」ときてますよと知らせてくれるメモ。
これにより、ファーストインプレッションで両思いという可能性もあるので、マッチングが容易になる。
渡されたメモ用紙を見ると、幾つか番号が書いてあったが、書いてくれた人に興味なかったのでスルーした。気になっていた係からはもメモを貰い、見てみると「また来てね♡」とキャバクラ同様の交わし方。やはりこの手の誘いは慣れているのだろう。
もうこのパーティーに用はない。端で用意された料理を食べながら観戦モードへ。
参加者としては疲れるが観客として見ると面白く、誰が誰を狙っているのかよく分かる。
藤田は?
彼は宣言通りにカオリさんへアタックを仕掛けていた。熊田曜子似だけあって、他の男性も集まっていたが、藤田の粘り腰の前に次々と離れていく男性陣。
さすが藤田。にしても二人とも楽しそう。
数分後、藤田が食事と飲み物を取りに来た。
「(小声で)いけそう!」
その後は藤田とカオリさんは窓際の席に移動し、フリータイム終了まで楽しそうに話していた。
-フリータイム終了-
最後に気に入った一名の番号を記載して提出。
マッチングしたらカップル成立となる。
約10分の集計が終わり、いよいよ結果発表。
「男性24番さんと、、、、、、女性27番さんカップル成立でーす!!」
パチパチパチ。
こんな感じでカップル成立が発表がされる。
男女比が悪い割に今回はカップリングが多いと係の人も驚いてた。
そして遂に藤田の番号が呼ばれる。
「男性38番さん(藤田)と、、、、、、、女性19番さん(カオリさん)!カップル成立でーす!!」
パチパチパチ!!
だろうね。
こうして無事に藤田はカオリさんとマッチングしてパーティーは終了した。 終了後、先に会場の外へ出ていると、藤田とカオリさんが一緒に外へ出てくる。
「あっ、先程はどーも」とカオリさん。
「飲みにでも行くの?」
「いや、今日は時間も時間だしまた今度ってなった」
「ではまた今度!」
カオリさんと別れて二人で銀座駅へ向かう。
パーティー前と違って妙に誇らしげな藤田が若干腹立つ。
-電車の中-
「実はさ、明日ディズニーシー行くことになったんだわ」
「えっ!?展開早過ぎない?」
「向こうが行きたいって言うから仕方ねーじゃん笑」
と勝者の笑み。
少し怪しい気もしたがそうでもないのかな?「とりあえず慎重にね」と伝えて藤田と別れる。
時計を見ると日付が変わる直前。
あと数分で12月24日…
-12月24日夜-
日付が変わる頃、藤田からメールが届く。
[人混みが凄かったけど楽しかったよ〜(^_^)v]
[おっ!良かったね!いい感じになりそう?]
[まだ分からねーけど、、、最後にキスした\(^o^)/]
いやいや、早過ぎるわ…今なら「出会って4秒で合体か!」って突っ込みもできるけど、当時はそれに相応しい言葉が見つからなかった。しかし、嬉しそうなのは充分伝わってきた。なにより藤田が絵文字を使ってメールを送るという行為だけで十分に伝わる。
もう「カオリさん大丈夫かな?」とか、余計な推測は止めよう。
藤田も大人。
しかし二ヶ月後、、、
あの時全力で止めておけばという事件が起きる。
長くなってしまうので、次回へ続く。