さよなら自分

終わったことを書いていきます。

銀座のパーティーで会ったのは天使か悪魔か?(2/2)

前回の続き。

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20××年2月上旬 :都内某所

指定されたビルの前でもう一度携帯を開いて住所を確認。

 

(間違ってない) 

 

見た目は至って普通の雑居ビル。

それが不気味さを倍増させた。覚悟を決めて扉を開けると、真っ黒なスーツを着た強面な男が2人立っていて、こちらを睨むように見てくる。

 「見ない顔ですね。誰の紹介ですか?」
「あっ、すいません。。」慌てて案内状を提示すると態度が変わる。

「申し訳ございませんでした。初めての方は入場前に荷物をチェックをさせて頂きますのでバッグを開いてください。」。 
「分かりました」 (やはりヤバいとこか?)。

荷物チェックは、バッグの内ポケットなども含めて結構細かくチェックしてくる。「ご協力ありがとうございました。お通りください。」

もう一人の男性に連れられ地下1階へ降り、薄暗い廊下を20m程歩くと大きな扉が現れた。

 

「こちらになります。心ゆくまでお楽しみくださいませ…」

 

ギィ〜・・・。


重いドアを開けるとさっきとは全く異なる光景。綺羅びやかなフロア。ステージ上ではセクシーな衣装に身を包んだお姉様方がダンスをしてお客さんを盛り上げている。

  • 目当てのダンサーにチップを渡す人
  • 『ピィ〜!ピィ〜!ピィ〜!』と口笛を鳴らす人
  • 手拍子をして楽しそうに過ごす人

客層は50〜60代らしき男性がほとんどだが、中には若い女性もいて皆がステージのショーを楽しんでいる。

まるでFNS歌謡祭のよう。ダンスが終わると次は手品のコーナー。これは箸休めのようなイベントで、お客さんは飲み物を取りに行ったり、談笑したりと手品に注目している人は少なかった。

 

ここでは普通が平凡。

 

そしてメインコーナーの時間へ。大きな音楽と共に現れたのはカオリさんと藤田!!!観衆は待ってましたとばかりに大きな拍手。

カオリさんはエスとエムな嬢風ファッションに身を包み、ステージ上をムチでビシビシ叩いて会場を盛り上げる。

 

一方の藤田は大きめのパンツ一丁に、もののけ姫のカオナシ風なお面を被って突っ立っていた。

藤田・・・

お前何やってんだ? 

 

-1か月前-

パーティーが終わってから初めて藤田と会う機会があり、カオリさんとの話を色々と聞かせてくれた。

「とにかくカオリさんは最高」
「カオリさんと一緒にいるだけで幸せ」
「カオリさんにもっと早く会いたかった」

何かあれば「カオリさんが〜」である。ハッピーな奴め。パーティー時の雰囲気、全員に電話番号を渡していたこと、社長秘書という分かりやすい肩書、翌日デートへ行くノリ・・・全てを怪しく感じていたが、考えすぎだったのだろう。

しかし、途中で突っ込まざるを得ない発言をする。

「俺今カオリさんと一緒にステージ立ってるんだけど、マジ面白いよ。今は週末だけだけど合ってる気がする。本業にしようかな?笑」

 

???

ステージ?

カオリさんと一緒?

 

「えっ何やってんの?」

「ん〜ここでは言いたくないから今度見に来る?」

「?てか、変なことしてないよね?」

「ったりめーじゃん笑」

すると藤田は1枚の案内状を渡してくれた。貰ったのは真っ黒なカードで裏にはパーティー名と番号が記載。

「住所はメールするから宜しく!」

「いや、どう考えても怪しいでしょ?」

 

「フフフ」


その場はとりあえず別れたが、良い雰囲気は感じなかった。そしてエスとエムなショーに繋がる。

 

・ ・ ・

藤田とカオリさんの間でどういう約束を交わしたのか分からないが、どう考えても「付き合っている」ようには見えない。ショーは見るに耐えなかったのでフロアの隅へ移動。

外人のウェイターがステージを指差して「面白いのやってんのに見ないの?」と教えてくれるが、手を振って「No〜」と。その後もカオリさんが藤田をイジる度、会場からは歓声が鳴り響く。

 

おおお!!
ハハハッ!

 

完全に異常だがここでは通常。

 

約15分のショータイムが終わると客席からチップが投げられる。それをコソドロのように拾う藤田とそれを後ろから蹴るカオリさん。

 

アッハッハッハ!!

 

狂ってやがる。

 

・ ・ ・

 

ショーが終わり5分もしないうちに藤田がスタッフ専用口から、パンツ一丁のままカオリさんと一緒に挨拶へきた。

「オイッス!」
「どうも〜」

正直カオリさんは眼中ではない。お前だよ藤田。「いや、(エスとエム)じゃん。。」

「うん。思ってた以上に向いてたみたい!どう?」

「ふーん、、、ごめん。コッチの世界は好きじゃないんだよ・・・」

するとカオリさんが口を開き、「良太(藤田)も最初はそう言っててコレだから、試してく?世界が変わるかもよ?」。

 藤田も「次のショーどうよ?」と勧めてくる。「何いってんの?ごめん。ちょっと話にならなそうだから帰らせてもらうわ」と会場の扉を開けて外へ出る。

 

はぁ〜・・・

こうして友人はアブな世界へと。

出口方面に向かって歩いてると、後ろから藤田がパンツ一丁のまま追いかけてきた。

 

「待てよ!」

 

「何?」

 

「お前さ、俺の事引いた目で見てるけど、自分は誇れるの?好きなこと出来てるの?」
とパンツ一丁の青年が説教し始めた。

 

「いや、そうかもしれないけど、それがムチで叩かれる理由にはならないし。。」

 

「そうか、、、もう少し話しの分かる奴かと思ってたけど、残念だわ。。」そう言い残し、藤田は寂しそうに会場へ戻っていった。

 

分かってあげられなくてごめん。

 

しかし、藤田の迷走は意外な形であっさりと終わりを迎える。

 

-ロウソクは-

藤田は1ヶ月も持たずにエスとエムなバーの仕事辞めたようだ。桜の情報がニュースになり始めた頃、久しぶりに藤田からメールが届く。

[あの時は酷いこといってごめん。実はバーやめたんだ。カオリさんとも別れた。]

[え?そうなの?]

[うん。やっぱり俺も無理だった。。。ムチはともかく、ロウソクが耐えられなかった。]

[そこ?笑]

[まあ、いい社会勉強になったと割り切ることした]

[そうか。まあいいや、今度みんなで飯でも行くか]

[そうだね!]

それから数ヶ月後、藤田は地方へ転勤すると疎遠になり、今では全く連絡しなくなった。

 

それでも唯一、クリスマスの時期は藤田を思い出す。

特にケーキ屋さんで店員さんから「ローソクは何本お付けしますか?」と聞かれる時。

 

藤田元気かな〜って。

 

あの時藤田が味わったローソクの熱がどの程度か知る由もないが、藤田をコッチの世界に戻してくれた炎だと思っている。

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それでは良いローソクで良いクリスマスを!